HIROAN INSTITUTE
博庵 研究所

革は用途に依り使い分けが必要

革は用途に依り使い分けが必要である。
では、その使い分けをしなければならない理由を述べよう。

革は皮革と呼ぶが、皮とは我々人間も動物も同じである皮膚を指す。
しかし剥いだままの姿では当然腐敗してしまう。
そこで、長い歴史に培われてきた鞣し(なめし)という加工が登場する。
この加工が成功した事に依り、物を造る為の革が誕生したのである。

鞣しは2つの方法に大別出来る。
1つ目は、我々が良く知っている渋柿の渋である。
ただ実際には渋柿では鞣すには相応しくないので、それに都合の良いものがある。
通常使用されているものには、ケブラチオ・ミモザ・チェストナット(栗)が挙げられる。
皆、樹木の樹液を利用する。

ガウディのトカゲ

ガウディのトカゲ

渋で鞣したものは、どのような性質を示すのか

この渋で鞣したものは、どのような性質を示すのか。
革そのものでは理解しにくいと思うので、生地に例えて説明しよう。
渋は、自然のものであるが故に自然繊維である綿・麻・絹の様になるのである。
水を良く吸い、濡れている時弱く、乾燥している時は強い。そしてクチャクチャとするとそのままになり、スチームアイロンを掛ければ即シャンとする。時が経てば風合いが増して自然な味が出てくる。
切り目のミガキの仕事をするのに、この渋鞣しの革がとても都合が良い。

水を吸った湿っている状態の時にクセが良く付く。
そして、革の組織の中に動物性のタンパク質がそのまま残っている為、ミガキの際の摩擦に依る熱で、水分を与えたコバは丸く潰れ、艶が掛かりそのまま固まってくれる。これが渋の革のミガキのメカニズムである。

ダマスカス鋼の刃物

ダマスカス鋼の刃物

2つ目のクローム鞣し

2つ目のクローム鞣しはどうだろう。
元素記号Cr. 原子番号24で良く知られた金属。この金属の溶液で鞣したものがクローム鞣しだ。
先程前述したように生地に例えて言うと化繊のようなものになっているのである。
水を吸わず(繊維そのものには)濡れようと濡れまいと強さは変わらない。
クチャクチャとしても、すぐ元に戻る。

ところが一年も寝かした折り皺はアイロンをもってしても元にはなかなか戻らない。
故に非常に復元性が良いが、クセを付けたい時に付きづらい。
切り目に際しては、革の繊維中のタンパク質も変化してしまっているので、ミガキを掛けても何の変化も示さない。依ってコバミガキに非常に不向きである。

ベネチアのミルフィオーリ

ベネチアのミルフィオーリ

研究済みのミガキが出来る方法

実はHIROANは、このクローム鞣しであってもミガキが出来る方法をすでに研究済みである。
何かクローム鞣しは、つまらないものに感じる様であるが、非常に水分に強い事から工業用のパッキン、そして身近な所ではジーンズの背のベルト通しのように何度洗濯しても駄目にはならない。渋であったらバリバリになってしまうであろう。
クローム鞣しは、安定した一定のものを造るのに有効である。

色々と書いてきたが、1つだけ逆転している部分がある。
自然繊維である所の渋鞣しの革は熱に非常に弱く、クローム鞣しの革は化繊の性質であるのに非常に熱に強いのである。
渋の革が熱に弱いと言っても、100℃以上の高温での話なので通常の使用においては何ら神経をとがらす事ではない。
では、どういう革が渋かクロームか判別がきかないであろう。
細かく書くと書ききれない程、沢山あるので代表的なものを書こう。

染付の龍皿

染付の龍皿

代表的な渋・クローム

  • コードヴァン
  • ブライドル
  • ヴァケッタ

(イタリーのフィレンツェ郊外のサンタクローチェという町の特産品)

このヴァケッタは製法の名であり商品名としてミネルバ・リスシオ・ブッテーロ等がある

クローム

  • ワープロルックス(ヴァインハイマー社製)
  • チェルケス(デ・ピュイ社製)
  • ケニアカーフ(ヴァインハイマー社製)
  • ボックスカーフ(ヴァインハイマー社製)

上記全てヨーロッパ有名ブランドが使用

上記の表でお分かりだと思うが、コードヴァン、ブライドル等は強いものではないと言う事である。従って厚みをもたせる事で解決しなければならないので、この種の材料を使った品物は厚く固いものが多い。
そこでHIROANは、薄くしなやかなものを欲しいと思い、表部分(身頃)を極薄(0.4~0.6mm)にし、純渋ではない少々クロームの入った強さのあるものを、これも又極薄にし全面貼り合わせ(ベタ貼り)する事で解決している。
コードヴァン、ブライドルに関しては、ベタ貼りの手法を採っているものは世界的に見て殆どない。

伊萬里の油壺

伊萬里の油壺

宣興の急須

宣興の急須

着色について

この着色にも大別すると2つある。水染めと塗装である。
塗装とは、文字通り革の上に塗料を塗るのである。塗ると言っても大半が吹き付けであるが、これは革の表面に塗膜が出来る為、出来上りの品物に触れても革そのものの肌を感じる事は出来ない。しかし一定の色を量産するには良いかもしれない。そして水分に対しては強い。

水染めとは、文字では水と書くが総称の事であって、染料染めの事である。

染料とは革に染料を染み込ませるものであり、染み込ませる為に革の表面に膜はできない。ただ、革の染め加工の前に一定に染めようとする為、脱脂をするが、全面均一には、なかなかならずにムラが生ずる。

しかし、そのムラが自然な感性を醸し出し、何とも言えない透明感を生む。
水染めをしたものの代表的なものに渋鞣しのものが多い。ブライドルもヴァケッタもである。
HIROANの99%がこの水染めである。
しかし、コードヴァンに関しては、大半がトップコート(表面ラッカー処理)を施すか吹付け塗装の為、HIROANでは最後まで何も表面をいじらない、水染めのままで仕上げしているものを使用している。
純然たる水染めの仕上げは世界的に見てごく稀である。

鼻薬ビン

鼻薬ビン

HIROANは3代続く紳士物小物専門メーカー

HIROANは3代続く紳士物小物専門メーカーである。

故に、奇を衒うような事よりも、オーソドックスでありながら質感を重視したものにしたい為、渋鞣しを好み、水染めを好み、切り目の仕上げを追求していきたいのである。

ルックスの小銭入れ

ルックスの小銭入れ

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